ゲームの翻訳・ローカライズにかかる費用

ゲームが世界中のプレイヤーに届くためには、ただの翻訳ではなく、文化や価値観に合わせた「ローカライズ」が不可欠です。
特に海外展開を検討する際、ゲームの雰囲気やメッセージが正しく伝わるかどうかが成功の鍵を握ります。
とはいえ、ローカライズを始めようと考えたとき、最初に気になるのは「費用はどれくらいかかるのか」という点ではないでしょうか。

実際のところ、翻訳単価だけでローカライズ費用を判断してしまうと、想定よりも大きな出費に驚くケースが少なくありません。
テキスト翻訳だけでなく、音声、UI、QA、文化的適応など、プロジェクト全体として多様な作業が伴うためです。

本記事では、ローカライズにかかる費用の構成要素や相場感、費用を抑えるための工夫まで、実務的な視点で詳しく解説いたします。
インディーゲーム開発者から大手パブリッシャーまで、海外展開を目指す方にとって実践的な指針となる内容といえるでしょう。


目次

ローカライズ費用が発生する理由とは?

ゲームのローカライズは、単なる言語の変換ではありません。
その文化圏のユーザーが自然にプレイできるよう、文化的・法律的・技術的に最適化する必要があります。
この「適応」のためには、多岐にわたる専門工程が関与し、それぞれに費用が発生します。

たとえば、単語の意味だけを置き換える翻訳作業では、文化的なジョークや価値観、法律上の制限などには対応できません。
西洋と東洋ではユーモアの感覚が異なり、ジェンダーや暴力描写に対する規制も国ごとに大きく変わります。
これらを踏まえたローカライズには、単なる翻訳者ではなく、現地文化に精通したネイティブスタッフや専門ディレクターの関与が必要です。

さらに、ゲーム内のUI設計や音声データにも調整が必要になります。
たとえば、日本語の短い単語を英語に置き換えると文字数が増え、ボタンサイズや画面レイアウトを再設計しなければなりません。
また、吹き替え音声の収録にはキャスティングやスタジオ利用費、演出監修といった工程が発生します。

このように、ローカライズは「翻訳+制作+監修+検証」という複合的な業務の集合体であり、各工程における人件費や外注費が積み上がる構造となっています。
そのため、テキスト量に比例する「翻訳費」だけを想定していると、想定外の支出に繋がる可能性が高まります。

ローカライズ費用の本質は、単なる翻訳料ではなく、グローバルな成功を支える総合的な適応コストであるという理解が重要といえるでしょう。


翻訳・ローカライズに失敗しないためのチェックリストをこちらで公開していますのでこちらの記事も合わせてご覧ください。

ゲームローカライズ費用の主な内訳

ローカライズにかかる費用は、いくつかの主要な項目に分けて理解することができます。
これにより、見積もり時に過不足のない費用設計を立てやすくなります。

まず基本となるのが「翻訳費」です。
一般的にはワード単価で換算され、1ワード10〜25円程度が英語への翻訳相場です。
10万ワードの翻訳なら100万〜250万円が目安となり、対応言語が増えるごとに加算されます。
また、RPGやSFジャンルなど、専門性が高く用語が多いタイトルは、さらに単価が高くなる傾向にあります。

次に「ローカライズ管理費」があります。
これは翻訳全体を統括するPM(プロジェクトマネージャー)の人件費や進行管理費です。
用語の統一、スタイルガイドの管理、複数言語間の品質整合など、全体の品質を維持するために不可欠な役割を担います。

続いて「LQA(Language Quality Assurance)」と呼ばれる工程も重要です。
翻訳がゲーム内で正しく表示されるか、誤訳や文化的な誤解がないかを確認する工程で、プレイしながらチェックされます。
LQAには専用のネイティブテスターが関与し、数百時間にわたる作業が発生することもあります。

さらに、「音声収録・編集費」も大きなウェイトを占めます。
現地の声優手配、スタジオ収録、演出監修、音声データの整音など、1キャラクターあたり数万円〜数十万円が目安です。

加えて「画像・UI調整費」が発生します。
翻訳によってテキストの長さが変化し、ボタンサイズやレイアウトを変更する必要が出てきます。
この工程は、グラフィック担当者との連携が不可欠で、工数も見積もっておくべき要素です。

最後に、「法務・レーティング対策費」です。
各国での倫理ガイドラインや表現規制を遵守するため、法的チェックや修正作業が求められる場合があります。
これに違反すると販売停止や配信拒否につながるため、非常に重要なプロセスです。

これらすべての費用が総合されて「ローカライズ費用」となります。
単なる翻訳作業ではなく、制作・運用・品質保証・法対応を含む包括的なコストであることを把握しておく必要があるといえるでしょう。

初めての翻訳依頼でご不安な方はこちらの記事で初めての翻訳依頼で知っておくべき事を併せてご覧ください。

ローカライズ費用の相場と価格モデルの違い

ローカライズ費用の相場は、翻訳する言語、ジャンル、ボリューム、そして発注先の形態によって大きく異なります。
一般的な英語翻訳の単価は、1ワード10円〜25円程度が相場です。
たとえば10万ワードのゲームであれば、翻訳費だけで100万円〜250万円に達します。
ここに管理費、音声収録費、LQA、UI調整などを加えると、総額300万円〜800万円という規模になることも少なくありません。

言語によっても単価は大きく変わります。
英語や中国語、韓国語など対応頻度の高い言語は比較的リーズナブルですが、スウェーデン語やアラビア語などのマイナー言語は単価が高く、翻訳者の確保も難航する場合があります。

費用体系にもいくつかのモデルがあります。
最も一般的なのが「従量制モデル」で、ワード単価×ワード数で費用を算出する方式です。
次に「パッケージ型モデル」があります。
こちらは特定の対応言語数と作業範囲をセットにして一定額で提供するプランで、費用予測がしやすい利点があります。

一方で、柔軟性を重視する「カスタム見積モデル」も存在します。
これはプロジェクトの進行に応じて段階的に対応範囲を拡張する方式で、インディーゲームなどスモールスタートを想定する開発者に向いています。

また、注意が必要なのは「極端に安価な見積もり」です。
クラウドソーシングや機械翻訳を主体にすることで価格を抑えている場合、翻訳品質やチェック体制が不十分なケースも見られます。
結果として、修正コストが重なり、最終的には割高になるリスクもあるため、単価だけで判断しないことが重要です。

ローカライズ費用は、「品質」と「納期」と「対応範囲」のバランスで構成される投資です。
単なるコストと捉えるのではなく、将来的な収益化や海外展開成功の基盤として考えることが、長期的な成果につながるといえるでしょう。


費用を左右する要素と注意点

ローカライズ費用は、翻訳対象の文字数だけで決まるものではありません。
実際には、多数の要因が影響し、それによって最終的なコストが大きく変動します。

まず最も大きな要素は「対応言語の選定」です。
英語や中国語などは市場規模が大きく、翻訳者も多いため比較的費用が安定しています。
一方、ポーランド語、アラビア語、タイ語などローカル色の強い言語では、翻訳者が限られ、費用も上昇しやすくなります。

次に影響するのが「ジャンルと専門性」です。
たとえば、シンプルなアクションゲームと、膨大な会話があるRPGとでは、要求される表現力や知識がまったく異なります。
専門用語やファンタジー世界観の整合性を保つため、翻訳者が深くゲーム内容を理解している必要があり、ここにも時間とコストがかかります。

「スケジュール」もまた重要です。
短納期を求めると、夜間稼働や複数翻訳者の投入が必要になり、管理負荷も上がるため、見積もりが割高になる傾向があります。

さらに、翻訳対象のデータ形式がバラバラだったり、支給資料が整っていない場合も、工程の前後処理で工数がかさみます。
仕様書や用語集、セリフの意図などが整理されていないと、翻訳者が解釈に迷い、修正の手間が増えてしまうのです。

最後に、プロジェクト後半で仕様変更や新規テキストが追加される「スコープクリープ」も大きなリスクです。
このような場合、想定外の追加費用がかかるだけでなく、納期遅延や品質低下の原因ともなります。

ローカライズ費用を予測するには、単価や分量だけでなく、プロジェクトの構造全体を俯瞰する視点が欠かせません。
初期設計を丁寧に行い、翻訳者と密に連携する体制を構築することで、余計なコストを抑えつつ、計画通りの品質を実現できるといえるでしょう。


まとめ:費用感を理解し、無理のないローカライズ計画を

ローカライズは、単なる翻訳作業ではなく、グローバル市場での成功を目指すための“投資”です。
そのためには、費用の内訳を正しく理解し、自社の規模や方針にあった施策を選ぶことが求められます。

本記事では、ローカライズ費用の構造を明らかにし、以下のポイントを丁寧に解説してきました。
まず、費用が発生する根本理由は、単なる翻訳ではなく、多層的な適応作業の存在にあります。
翻訳、音声、UI、文化調整、QA、法務対応など、各プロセスが複雑に絡み合うことで、コストが膨らむことを理解することが出発点です。

次に、費用の主な構成要素とその相場感を把握し、作業範囲を明確にした上で見積もりを依頼することが重要です。
また、複数の見積もりを比較する際には、単価の安さではなく、対応範囲・品質・柔軟性といった全体バランスを見ることが成功の鍵です。

さらに、費用を左右する要因には、言語の希少性、ゲームのジャンル、スケジュール、データの整備状況など、多くの変数があります。
これらに気づかないまま進めると、想定外の費用増や品質のばらつきにつながるため、発注前の要件整理が不可欠です。

そして、コストを抑えつつ品質を保つための工夫としては、翻訳メモリの活用、段階的な展開戦略、ポストエディットの導入など、複数の手段があります。
これらは特に中小規模開発者やインディーゲームの現場で実践的に効果を発揮します。

ローカライズは一度限りのコストではなく、今後のアップデートや新展開にも影響する長期的視点の施策です。
翻訳会社との信頼関係を築き、透明なコミュニケーションと合理的な計画のもとでプロジェクトを進めることが、最終的な成功を左右する要素となるでしょう。

適切な費用感覚を持ち、自社の状況に合わせた選択を行えば、ローカライズはコスト以上のリターンを生む戦略的投資になるといえるのではないでしょうか。

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海外市場にゲームを届けることは、収益拡大の大きなチャンスです。しかし、ローカライズの品質が低ければ、プレイヤーの評価が下がり、せっかくの機会を逃してしまうことも。限られた予算の中で、文化や言語に適応した高品質なローカライズを実現するには、専門のパートナーが不可欠です。

ウィットワンなら、海外ネイティブの専門スタッフが各国の文化やゲーム市場を理解した上で、最適なローカライズを提供します。LQA(倫理チェック)やカスタマーサポートも含め、リリース後の運用まで一貫してサポート。実績豊富なチームが、あなたのゲームのグローバル展開を成功へと導きます。

ローカライズの品質を妥協せず、コストを最適化する方法を知りたい方は、ぜひご相談ください。

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この記事を書いた人

「Wit One ブログ編集チーム」です。
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